荒尾梨の木が冬の間に施される土作りとは
秋の代表的なフルーツ、梨。
口から溢れるほど甘い果汁と、シャリシャリした食感がやみつきになりますよね。
食後のデザートやおやつとして、食べる人が多いことでしょう。
収穫シーズンを過ぎた冬になると、梨の木は休眠期に入ります。
でも、休眠だからといって何もしないというわけではありません。
枝の手入れや土作りをし、次のシーズンに向け準備を行います。
そして春には受粉作業を行い、夏には実がなり、秋に収穫を迎えます。
では具体的に、休眠期にはどんな準備をしているのでしょうか。
荒尾梨が作られる熊本県荒尾市
熊本県荒尾市は、梨の産地として100年以上の歴史を誇る
全国でも有数の梨産地です。
毎年秋になると、荒尾市の道路の至るところに多くの直売所がオープンします。
ずらりと並べられた梨を求め、連日多くの客で賑わいます。
荒尾ではおもに、 豊水(ほうすい)、新高(にいだか)
幸水(こうすい)、あきづき、秋麗(しゅうれい)などの品種が作られています。
その中でも、実がとびきり大きく、そして果汁も甘い新高は
荒尾ジャンボ梨と呼ばれ、贈答品としても、とても人気のある品種です。
荒尾梨を作っている高塚さん
深い歴史に育まれた荒尾梨を、農薬を最大限抑えて作っている
希少な農家の方がいます。
その方の名は、高塚成生(たかつか・なりお)さんです。
梨に、農薬は欠かせません。
農薬を使わないと、病害虫が大発生してしまうのです。
しかし、高塚さんは、農薬の使用には健康被害などの懸念を抱いていました。
いくら人体に影響はないと認められているとはいえ
化学物質で作られた農薬自体、決して無害とは言えないものだからです。
高塚さんは、自身のお子さんがアレルギー体質だったこともあり
「子どもたちが安心して食べられる梨が作りたい!」
という想いを、農園を継いだ35年前から抱き続けてきました。
その想いを実現するべく、高塚さんは試行錯誤しました。
梨の木を、何本も枯らしてしまうこともありました。
農薬の完全不使用は難しかったのですが
最大限抑えて作る独自の栽培方法を生み出したのです。
荒尾梨栽培で高塚さんが冬の間に行う土作りとは
高塚さんの農園は、他所の農園と全く異なった環境を生み出しています。
最大の特徴は、冬期にクヌギの葉を梨の木が植えられている地面に敷き詰め
落葉樹と同じ土壌の環境を作りだしている点です。
梨作りにおいて、土作りは重要なポイントです。
梨は、土の性質によって味に影響が出やすい果物だからです。
そのため、常に新鮮な土壌を保たなければならず、細やかな管理が必要です。
クヌギの葉は、そのまま腐葉土として使用できます。
腐葉土がどのような役割をしているかというと
農園に降り注いだ雨がこの腐葉土を通り
ミネラルが豊富な“森の雫“となって、梨の瑞々しい果汁を作り出す水分となるのです。
ミネラルをたっぷり含む水はけの良い土壌は
香りの豊かな梨を作るための秘訣でもあります。
高塚さんは、冬になると、こうしてクヌギの葉を農園に敷き詰めてゆきます。
この腐葉土の効果により、肥料を使用しなくとも
梨の木自身が創り出す、梨本来のベタつかない爽やかな後味の美味しい梨ができるのです。