梨の完全無農薬2年目の挑戦|高塚成生の荒尾梨

更新日:2023年8月16日 公開日:2023年8月16日

荒尾梨の無農薬栽培に挑戦する高塚成生

こんにちは!自然果樹園ナチュラルスタイルの井田敦之です。

果樹の無農薬栽培は非常に難しく、現代において取り組む農家さんはほとんどいません。

無農薬で果樹を栽培すると、虫や病気のリスクをはじめ、大幅な収量減などのリスクがあるためです。

さらに昨今は異常気象も頻発しており、暖冬による眠り病や台風による実の落下など、予測不能の事態に悩まされることもあります。

このような中、梨の産地として全国的に有名な熊本県荒尾市に、35年以上にもわたり安心の梨作りに挑戦している高塚成生(たかつか・なりお)さんがいます。

今回は、高塚さんに梨の完全無農薬栽培2年目の現状や現れた変化などについて伺いました。記事の最後にはご本人の動画もございます。ぜひご覧ください。

梨の無農薬栽培は想像以上に難しい・・・

高塚さんは、これまで最大限農薬を使用せずに梨栽培に挑戦してきました。

地域にもよりますが、一般的に梨栽培では、1年で20-30回の農薬散布が必要だといわれています。

そのような中、高塚さんは徐々に農薬減らし、5年前には1年に2-3回までに減らしました。

しかも高塚さんは、薬剤を園内で噴霧しながら走行するスピードスプレーヤーではなく、手動で局所的な散布を行い、使用量を最小限にしていました。

上の写真のように病害虫で樹を枯らすこともありましたが、安全で美味しい梨を目指し、3年前には梨栽培で絶対必須である黒星病や赤星病対策の殺菌剤の使用をやめ、さらに2年前からは殺虫剤の使用もやめました。

梨産地の荒尾では、殺菌剤・殺虫剤を使用しないなんて全く非常識な栽培方法です。

非常識に挑戦した結果、高塚さんの梨園は今どうなっているのでしょうか?

完全無農薬2年目で梨園に現れた変化とは?

荒尾梨の無農薬栽培に挑戦する高塚成生のお話

私は5年以上にわたり、高塚さんの梨園の変化を一緒に見てきました。

高塚さんの梨園には、毎年、小鳥が巣を作ったり、うさぎが走り回ったり、クワガタやカマキリ、クモなどのいろんな虫が活動したりと、生物の命が溢れている全く雰囲気の違う梨園です。

完全無農薬に変えて2年目となる今、良い面としては、アブラムシの発生量が少なくなったことだそうです。

しかし、マイナス面としては、これまで見ることがなかったカシルリチョッキリやグンバイムシが増えてきたと言います。

また、梨の樹に甚大な被害を与える黒星病も多くなってきていると言います。

カシルリチョッキリ(モモチョッキリゾウムシ)

梨に被害を与えるカシルリチョッキリ

カシルリチョッキリは体長3ミリほどの小さな虫といわれますが、梨園にいたのは体長10ミリほどでしたのでモモチョッキリゾウムシかもしれません。

どちらも吻(ふん:口あるいはその周辺が前方に突起している部分)が長く、新芽を噛み切って折ったり、果柄に穴を開けて樹液を吸い、実がつかなくなります。

カシルリチョッキリの梨被害

果柄に穴をあけ樹液を吸われたために果柄が途中で折れてしまった状態です。

グンバイムシ

グンバイムシの被害

体長は3~5mmほどの虫で、羽をたたんだときの形が相撲の軍配に似ていることから、この名が付きました。

成虫・幼虫ともに庭木や果樹などの草花を吸汁し、葉の葉緑素がなくなり、被害が大きい箇所では落葉し枯らしてしまいます。

黒星病

黒星病の梨被害

梨に甚大な被害を与える病気の一つです。葉や果柄、果実などに黒いすす状の病斑を生じ、落葉、落果、裂果の原因となります。

上写真のように罹患するともう実を付けることはできません。

黒星病が発生する時期には、雨が降る前に必ず農薬を散布し対策するのが梨栽培において一般的です。

完全無農薬に挑戦し続けている理由とは?

高塚の荒尾梨に来る小鳥

高塚さんは、ご自身のお子さんが幼い時に化学物質過敏症だったことから、ご家族の食べ物には一層こだわってきました

そのため梨栽培においても、梨の樹の状態を見ながら農薬を最大限使用せずに栽培してきましたが、どうしても病害虫が発生し、農薬をゼロにすることはできませんでした。

しかし、10年以上にわたる長年の土作りを経て、梨の樹勢が徐々に良くなってきて抵抗力が少しずつついてきました。さらに毎年、小鳥達が高塚さんの農園に巣を作り、いろいろな生物の生息場所になっていることから、2年前から全く農薬を使用しない栽培に挑戦しています。

農薬を使用せずに、梨自身の持つ力で育った梨をお届けしたいと思います。

最後にぜひ、こちらの動画をごらんください。

梨の無農薬栽培への挑戦

完全農薬不使用での梨栽培になってからの園内での変化をお話し頂きました。

無農薬での栽培は容易ではなく、まだまだ様子を見る必要があると氣を引き締められていますね。

最後に:梨の完全無農薬2年目の挑戦

私はこれまで、高塚さんの梨園を何度も訪れてきました。高塚さんの農園は、一般の梨園とは明らかに異なる雰囲気で、生物達の息吹を感じられる農園です。

一般に病害虫や黒星病などが目の前で広がっていく様子を見ると居ても立ってもいられなくなり、農薬を撒いてしまうでしょう。そのような状況に直面しても、梨の樹の状態を見ながらも農薬を使用しない高塚さんの精神力には感心します。

農薬を完全に止めてから2-5年ほどは大変な移行期間になるかもしれませんが、高塚さんの梨園を見守っていきたいと思います。

高塚さんが動画で仰っていたように梨の果汁は土の水分やミネラル状態が影響していると考えています。梨自身の力で元氣に育った高塚さんの荒尾梨を味わって頂ければと思います。

⇒ 高塚成生の荒尾梨(豊水、あきづき、新高)

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