無農薬で荒尾梨作りに挑戦した梨園とは|梨栽培歴35年以上の高塚の成生梨
こんにちは!自然果樹園ナチュラルスタイルの井田です。
梨栽培において100年以上の歴史を誇る熊本県荒尾市では、現在約150戸もの梨農家が荒尾梨(豊水・新高)を生産しています。
荒尾梨の中でも新高は「荒尾ジャンボ梨」とも呼ばれており、全国的にも有名で人気の梨です。荒尾のシンボルにもなっていますね。
私たちは7~8年前から、無農薬栽培で作られた安心安全の荒尾梨を探してきました。しかしどの農家を尋ねても「無農薬で梨を作るのは無理ですよ」と言われ続けてきました。
梨栽培において、一年間の農薬回数は20-30回ともいわれています。
現代において梨の無農薬栽培をしている方はいないのか・・・と諦めかけていた時、知り合いの自然栽培農家さんが、紹介してくれたのです。
この梨産地の荒尾で35年以上にもわたり梨の無農薬栽培に挑戦している高塚成生(たかつか・なりお)さんです。
まずは、高塚さんに梨の無農薬栽培の難しさをお話し頂きましたのでご覧ください。
【動画】梨の無農薬栽培の難しさとは!?
実際に無農薬に挑戦し続けた梨農家さんの生の声を聞いてみて下さい。常識とは異なる農園の姿がそこにあります。
<目次>
荒尾梨栽培歴35年以上の高塚成生さん
一般的に梨栽培では、年に20-30回ほどの農薬をまきます。しかし高塚さんは独自の栽培方法により、最大限農薬を使わずに梨を育てることに成功しました。現在は、梨の花が咲く前に1回だけ農薬を使用しています。そして、この1回もやめれるかどうか梨の樹の状態をみながら見極めています。
ギリギリを見極めながら栽培する高塚さんは、全国でも極めて稀有な梨農家さんです。
「難しい梨の無農薬栽培になぜ挑戦し続けるのか?」そのきっかけは、高塚さんの息子さんでした。
高塚さんのお子さんは、幼い頃からアレルギー体質で喘息を患っていました。そのため高塚さんは、「子どもたちには、不純物を含まない安心安全の梨を食べさせい」と思い、梨の無農薬栽培の実現を目指したのです。
子どもたちの健やかな成長のために取り組むこととなった梨の無農薬栽培。しかしそれは、非常に困難を極めるものでした。
梨の無農薬栽培は想像以上に難しい
上の写真は、ケムシが大発生して、梨の樹の葉がどんどん落ちていった状態です。
一般に農薬を使わずに梨を栽培すると、以下の状態になります。
・虫や病気が蔓延し、樹が枯れる。
・皮や実に傷が付き、見た目が悪くなる。
・雑草が繁茂する。
・収量が一般栽培の半分以下となる。
無農薬に挑戦すると虫や雑草などの対策を手作業でしなければならず、多くの労力がかかります。
手間暇をかけて育てても、収量は一般栽培の半分以下。虫や病気の影響で商品価値も下がり売れなくなってしまうので、梨農家として生計を立てられなくなってしまうのです。
黒星病とシンクイムシの脅威
梨の無農薬栽培で最も怖いのは、「黒星病」だと高塚さんは言います。
黒星病(くろぼしびょう)は、豊水などの赤梨に発生しやすい病気です。原因は、梨園に年中生息している病原菌。春になると胞子を飛ばして感染を広め、葉に黒い煤のような斑点を付けたり、実の裂果・ゆがみを招いたりします。
黒星病には特効薬がないため、一度かかってしまった葉や実は取り除くしかありません。よって秋から冬にかけて防除剤をまくほか、早めに摘果などし感染を防ぐことが、一般的な黒星病の対策方法です。
高塚さんは今から14年~15年前に梨の完全無農薬栽培に挑戦しましたが、その反動は大きく、翌年農園には黒星病が蔓延し、酷い被害に遭ったそうです。
また高塚さんは、梨の実に付く虫の中で「シンクイムシ」が怖いと言います。
シンクイムシは直接梨の実に入り込み、中から食い荒らす虫です。被害は実が成り始める初夏から発生し、収穫が終わるまで続きます。
「シンクイムシの実への侵入を防ぐことは難しい」と高塚さんは語ります。
それでも高塚さんの梨は、年々とこれらの虫や菌の被害が少なくなってきました。
虫や病気の被害が減ってきている理由は、実は農薬を使わないことによる農園の中の多様な生物でした。
無農薬に挑戦した結果、梨園はどのように変化してきたのか?
高塚さんの梨園には、毎年春になると鳥が巣を作りに飛来します。
鳥たちも本能で高塚さんの成生梨園は大丈夫だと分かっているのでしょう。
高塚さんは「4、5年前ほど前から梨の葉や樹の勢いが増してきて、樹全体が健康になっているのを感じている」と言います。
それは、農薬を最大限使用しないために現れている変化でした。
高塚さんの梨園では、虫や病気も発生はするのです。しかし多くの生物達によって蔓延しない生態系を築いているです。
益虫たちが農園をパトロール
高塚さんの梨園でよく目につくのは、クモです。これらの虫たちは、害虫の天敵となって農園をパトロールしているんですね。
農薬を使用しないためにこの環境が作られるのですね。
梨栽培において葉に付くアブラムシの発生も頭を抱える問題の一つです。
高塚さんの梨園を見るとこのアブラムシの大群にテントウムシがやって来て、アブラムシを食べてくれるのです。
これら益虫の活躍を見てきた高塚さんは、今では害虫がいても気にしないようにしているそうです。
高塚さんの梨園をまわると、実際に多くの生物達が高塚さんの梨を守っているのが分かります。
まとめ
高塚さんの梨園をまわると枯れた梨の樹もあります。無農薬栽培に挑戦し続けている痕跡が見られます。
農家さんの話を聞くと梨の完全無農薬栽培はいかに難しいか分かりますが、高塚さんと話をすると完全無農薬に希望を持っているのが分かりました。
私は、他の梨園も見る機会がございますが、無農薬に挑戦し続けてきた高塚さんの梨園は、もはや他の梨園とは様子が異なります。
なんといっても豊かな生物相でしょう。
梨を食べて頂く方のこと、農園の生物達のことを考えて無農薬に挑戦している高塚さんの梨は愛情に包まれています。
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私たち「ナチュラルスタイル」は自然栽培の現状や考え方を広く知ってほしいと思っています。
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【参照元】無農薬で荒尾梨作りに挑戦した梨園とは|梨栽培歴35年以上の高塚の成生梨