荒尾梨の無農薬栽培はどれだけ難しいのか!
こんにちは!自然果樹園ナチュラルスタイルの井田です。
通常、梨の栽培において農薬は不可欠です。
農薬を使わなければ、病害虫や病気が梨の実にはびこります。
農薬使用はもはや常識です。
生産者もわたしたち消費者も農薬の使用に関して何の疑問も抱いていません。
しかし、この常識を打ち破った農家が
熊本県荒尾市の梨農家
高塚成生(たかつか・なりお)さんです。
<目次>
荒尾梨の無農薬栽培への挑戦に人生をかけてきた高塚さん
高塚さんは今から35年以上前に親から梨農園を継ぎました。
この梨産地荒尾においても農薬使用が当たり前です。
農薬散布は、梨産地によりますが年20回~30回も使用される言われています。
一般には下写真のようなスピードスプレーヤーで園内を走行しながら薬剤を散布します。
しかし、高塚さんには、無農薬での梨作りに挑戦する理由がありました。
高塚さんは、自分の子どもがアレルギー体質だったこともあり、農薬の使用による健康被害の懸念を抱いていました。
そして自分の子どもだけでなく
アレルギーで悩むたくさんの人たちやお年寄りなどに
「誰もが安心して食べられる梨を作りたい」
そのような想いが強くなり梨の無農薬栽培に挑むのです。
高塚さんに梨の無農薬栽培が難しい理由を伺いました。
【動画】梨の無農薬栽培の難しさとは!?
梨の無農薬栽培は難しすぎる・・・
梨は、落葉果樹の一つです。
落葉果樹とは、冬には葉を落とす果樹です。
例えば、この梨に加え、りんごや桃ですね。
特に落葉果樹は、常緑果樹のみかん等と比較すると無農薬栽培が難しいと言われています。
荒尾の豊水や新高でも5月に農園に行くと上の写真のように実や葉柄がスス状に黒くなっているのを見かけます。これが黒星病です。
黒星病は越冬して春には胞子を飛ばします。防除しないと蔓延するのです。その他、梨には赤星病、黒斑病など多様な病気が存在します。
寄り付くのは実だけではありません。
樹自体にもカミキリムシの幼虫が棲みついてしまいます。
こうなると残念ながら
木自体を切らなくてはなりません。
我が子のように手塩にかけ、
愛情を注いで育てた樹を自分の手で切らなくてはならないのです。
無農薬の梨栽培に挑戦してきたために高塚さんはこれまで多くの樹を枯らせてきました。
高塚さんの梨園ではその挑戦の痕跡を見ることができます。
果樹の木は、植樹から実が成るまでに3~4年はかかります。
そして一本の木には200~300の実がつきます。
梨の樹を1本枯らせてしまうだけで大きな損害なのです。
果樹栽培で生計を立てている農家にとって梨の樹一本一本が“いのち”そのものだといえます。
梨栽培の現場を実際に見ると理解できます。
梨の無農薬栽培はリスクが高すぎて誰もしないのは当然です。
高塚の梨園は独自の梨園に生まれ変わった
高塚さんは、無農薬に35年間挑み続けた結果、梨の樹が枯れるギリギリのラインを見極めて栽培しています。
今では、梨の花が咲く前に1回使用するのみに抑えています。
除草作業も除草剤など使用せずに全て手刈りです。
その結果、実は、高塚成生さんの梨園は他の梨園とは全く異なる環境を作り上げているのです。
高塚さんの梨園の特徴は、「生物が多い」。
高塚さんの梨園を守っているのは、間違いなく農薬を撒かない事で棲みついている生物達です。
上の写真のように、農薬を使用しないのでクモ達が多く存在し、他の虫から守ってくれます。
梨の葉を枯らすアブラムシが大発生しても、同時にテントウムシの幼虫や成虫が発生して被害を抑えてくれます。
多種類のテントウムシの幼虫と成虫がアブラムシを捕食しているが分かります。
梨の樹に葉が茂ってくると、毎年、高塚さんの成生梨園には小鳥たちが巣を作りに来ます。
鳥たちの本能でも、この梨園は大丈夫だと認識しているのだと思います。
私はこんな梨園を見たことがありません。
荒尾梨の無農薬栽培にこれからも挑み続ける!
高塚さんは、過去に多くの梨の樹を枯らせてしまいましたが、ギリギリのラインを見極める目が磨かれてきました。
高塚さんは、何度もくじけそうになりました。
無農薬で梨を作る事に意味があるのだろうかと悩むこともありました。
しかし、高塚さんの梨を食べた人が続々と寄せてくれる感想は嬉しい声ばかりでした。
それが糧となり、高塚さんはこれからも
自分の梨を食べてくれる人のために作り続けようと、決心したのです。
まとめ
梨の無農薬栽培に挑戦しようとする方は全国でも非常に稀です。
よほどの想いがないと続けることができないのは現場を見ると分かります。
高塚さんが、無農薬栽培に挑戦したきっかけは、息子さんのアレルギーでしたが、現在では、全国のお客様の声に支えられて育っています。
農薬を使用せず、肥料を使用しないことで最大限梨の美味しさが引き出せると考えている高塚さんの成生梨(荒尾梨)をどうぞご賞味ください。
高塚さんはこれから自分の梨を求めてくれる人のために梨の無農薬栽培に挑戦し続けます。