梨栽培でのグンバイムシの被害|高塚成生の荒尾梨
こんにちは!自然果樹園ナチュラルスタイルの井田敦之です。
熊本県荒尾市の梨農家、高塚成生(たかつか・なりお)さんは、最大限農薬を使わずに梨を栽培しています。
一般的に梨栽培では、年に20~30回は農薬を散布します。これはもはや常識であり、全国的にも有名な梨産地である荒尾市で農薬散布は普通のことです。
しかし高塚さんは「安心安全の梨を作りたい」という想いから、梨の花が蕾の時に1回だけ農薬を使用します。花が咲いてからは、一切農薬を使用しません。
殺虫剤も使用しないため農園にはさまざまな虫が寄り付きますが、他の虫が益虫となって捕食しているため、生態系のバランスが保たれています。
しかし、今年、高塚さんを悩ませる虫がいます。それが梨の樹を蝕む、グンバイムシです。
グンバイムシとはどのような虫で梨の樹にどのような被害を与えるのかを高塚さんの動画も含めてお伝えいたします。
<目次>
グンバイムシとは?
グンバイムシは、成虫・幼虫ともに庭木や果樹などの草花を吸汁し、枯らしてしまう虫です。
成虫の体長は3~5mm。羽をたたんだときの形が相撲の軍配に似ていることから、この名が付きました。上の写真を見て頂くと、軍配の形に見えますよね。
葉の葉緑素が抜けたり、葉の裏が茶色になったりしたときは、グンバイムシが蔓延っているサイン。
梨の実に直接害を及ぼすことはありませんが、葉の生育を阻害するため樹勢を弱らせてしまいます。
梨の樹には、毎年6-8月頃に発生すると言います。
グンバイムシの被害状況
高塚さんの梨農園に寄り付いているグンバイムシの被害状況は、主に以下2つです。いずれも、梨の実の成長に悪影響を及ぼしてしまいます。
葉の葉緑素が抜ける
グンバイムシは葉を吸汁するため、葉の葉緑素が抜けて、葉には白い斑点のような模様が生じます。
葉緑素で梨の実の成長に必要な栄養素と作っているため梨の実の成長が遅くなり、梨の実が小さ目になります。
落葉
グンバイムシによって吸汁された葉の被害状況が大きくなると落葉することがあります。
葉が落ちると、実の成長に必要な栄養素を全く生産できないので、収量が得られないなど大きな被害を被ることになります。
グンバイムシの対策とは
一般的にグンバイムシは夏から初秋にかけて発生しますが、高温で雨が少ない天気が続くと多く発生するといわれています。
今年の夏は例年よりも暑かったうえに梅雨明けも非常に早かったためか、「例年よりも被害が目立つ」と高塚さんは言います。
実は、グンバイムシは、一般の農園ではさほど問題になりません。
なぜならばグンバイムシは、小さい虫のために農薬散布すればほぼ全滅させることができます。
しかし、高塚さんは花が咲いてからは一切農薬を使用しないので、このグンバイムシの被害を受けることになるのです。
よって高塚さんのグンバイムシ対策は、生態系を多様にし、益虫による捕食で発生を抑えることのみとなっています。
梨栽培でのグンバイムシの被害
最後に:梨農園でのグンバイムシ被害とは
梨の葉を吸汁することで実の成長を阻害するグンバイムシ。今年は高温少雨という発生しやすい天気が続いたためか、例年よりも被害が大きいとのことでした。
一般には、農薬散布すれば発生を抑えることができますが、農薬を使用しないとこのように被害が目立つのですね。
結果、葉の光合成がスムーズでなかったために糖度が上がりにくく梨のサイズも小さ目となりました。
高塚さんは花が咲いてからは農薬をまかないため、収穫が終わるまでグンバイムシと共生していく必要があります。そんな高塚さんにとって心強い味方のような存在は、やはり農園にいる他の虫たちです。
高塚さんは今日も生態系のバランスを保つべく、朝早くから農園を回り、梨の樹に声を掛けて手入れをしています。